2022年3月4週号
Iターン就農 野菜栽培を柱に 地域活性に一役
少量多品目栽培に取り組む宮田さん夫妻
福知山市の宮田毅(みやたつよし)さん(56)は、60アールで年間50~60種類の野菜を栽培しながら、農産加工などのワークショップ(体験型講座)を主催し、地域に密着した活動に積極的だ。
「田舎暮らしに憧れがあり、人生を変えたかった」という毅さん。妻の裕美(ひろみ)さん(43)の後押しもあり、2013年に神戸からIターンで移住し、野菜作りを始めた。
栽培技術は移住する2年前から、農業実習などで学び、農薬と化学肥料を使わない。「より自然な環境での栽培を目指している」と毅さん。直売をはじめ飲食店との取引、宅配便の発送などを行う。
市内の商店街で開かれる定期市「福知山ワンダーマーケット」に出店して、農作物や自家製の加工品を直売するとともに、運営に携わるなど地域との関わりを深めている。
ワークショップはコロナ禍で回数を減らしているが、自家産黒大豆を使ったみそ造りやぬか床造り、しめ縄作りなどが好評だ。今後は自宅で開催しようと、古民家の改装に着手した。「年内の完成を目標に頑張りたい。ここが憩いの場になれば」と意気込む。
2022年3月3週号
農業保険が継続の支え
現在は50~60歳前後のメンバーで維持していますが、下の世代となると農家が減っていきます。
今後、集落の農地を維持していかなければならないという感覚を下の世代に共有するのは難しく、その感覚を持っているのは自分たちが最後の世代なのかもしれません。
農家の収入や農機具の購入を考えると、そういった考えを持てないことも致し方ないことだと思います。
異常気象が続く昨今、安定した農業を継続していこうと思うと、農業保険は農家にとって必要なものです。
特に品目を限定して生産している米農家は、リスク分散が図りにくく農業を継続するためには、農業保険の加入は必須だと考えます。
集落の農地の維持のためにも共済部長として加入推進に努めていきます。
丹後支所
共済部長歴9年
担当戸数10戸
黒枝豆70アール、小豆20アール、ショウガ10アール、ハウス4棟
2022年3月2週号
ゆずこしょう 完熟果使って差別化ねらう
自社の直売所に自動販売機を設置している
ユズの剪定をする村上さん。千本近くありすべてすべて手作業だ
「ユズをメインにして、京都にないものを作りたかった」と話すのは、京都市「株式会社京都水尾農産」の代表取締役を務める村上和彦(むらかみかずひこ)さん(69)。ユズを1・6ヘクタール栽培し原材料メーカーに出荷するほか、ゆずこしょうなどに加工し販売する。
良質果目指し剪定
付加価値を高めようとユズの加工品を考えた村上さん。府内には京都にはユズを使ったみそやマーマレードはあったが、ゆずこしょうは無いことから商品化を決めた。
熟す前の青ユズではなく完熟したユズを使うことで芳醇〈ほうじゅん〉に仕上がり、有名産地との差別化をねらう。
副材料には自家栽培したハバネロや京丹後市産「琴引の塩」を使い、京都産を強調する。
この商品を扱うオンライン通販サイト「レッドビーンズ」の小豆佳代(あずきかよ)さんは「辛味のなかに完熟のフルーティさがあり、遠方からの利用やリピーターも多く、人気です」と話す。
村上さんは「評価してもらえることがありがたい。次の気力にもつながる」とやりがいを実感する。
高い品質のためには、1月から3月にかけての剪定〈せんてい〉が重要だ。5年先を見据えて低木で作業がしやすくなるように剪定し、風通しが良く、日光に当たるようにすることで病害虫に強くなるという。
地域の課題は高齢化や後継者不足など。手が回らず、収穫ができていない生産者が増えている。「後継者を育成することも大事。きちっとしたものを作り、水尾ブランドを守りたい」と村上さんは力強く話す。
2022年2月4週号
南丹市の就労支援施設 農業をやりがいに
タマネギの肥料まき。利用者は10人で週5回作業する
南丹市の「社会福祉法人京丹波福祉会」が運営する施設「あしたーる工房」では、障がい者の就労支援に農業を取り入れている。施設長の内藤経夫(ないとうつねお)さん(63)は「利用者が収入を得るだけでなく、作業にやりがいを感じてもらえれば」と思いを話す。
タマネギやハウスホウレンソウなどを栽培していて、畑を耕したり肥料をまいたりとおのおのができる作業を行う。
利用者の今川義章(いまがわよしあき)さん(50)は「農作業は大変ですが、自分たちが栽培、収穫した農作物を買ってもらえることに喜びを感じる」と笑顔で話す。
2022年2月2週号
自然を守り炭焼きを守る
桒原さん(右)の活動に8年前、「炭焼きがしたい」と移住してきた井上浩次さん(41)が加わっている
「黄金色に輝く窯から炭を取り出す瞬間にやりがいを感じる」と話すのは、京丹後市の桒原(くわはら)稔さん(69)。10月から4月にかけて、同市丹後町上山地区の炭焼き小屋で、木炭生産に精を出す。
桒原さんは1990年に京都市内から移住してきた。丹後半島の自然の魅力に引かれたという。「都会の感覚は持ち込まず、地域の流儀に従った生活がしたかった」という桒原さんは、知人に教わりながら白炭と黒炭の生産を始めた。
できあがった炭は市内の旅館や料亭などに販売するほか、直売も行っている。
副産物の木酢液は販売する一方、自家用の米作りに利用していて、「病害虫の発生がほとんど無い」と実感を話す。
「電気やガスの普及で人が山から離れ、荒れてきている」と桒原さん。「炭焼きで少しでも昔の良さが取り戻せたら」と夢を広げる。
2022年1月4週号
トマト栽培にICT活用 効率良く品質向上
「規模を拡大したい」と意欲的に話す北澤さん
「トマトの栽培管理にICT(情報通信技術)を活用することで、作業の省力化ができて生産効率が上がりました」と話す城陽市平川の北澤良祐(きたざわりょうすけ)さん(39)。災害に強い超低コスト耐候性の鉄骨ハウスで小玉の「アイコ」や大玉の「かれん」などを栽培する。
祖父の後を継ぐ形で10年前に就農。農業経営のノウハウや栽培技術は先輩農家から教わり、トマト栽培は2年前に始めた。
現在では経営が安定し、社会への貢献もしたいとの思いから、商品ラベル貼り付け作業を障害者福祉施設に委託するなど、農福連携を積極的に行っている。
「京都府は全国的に見てもトマトの生産量が少ないですが、どこにも負けないトマトを作ることができることを証明したい。この取り組みがお世話になった人たちへの恩返しであり、自分の使命と思っています」と力強く話す。
2022年1月3週号
営農に欠かせない農業保険
私の住む南丹市美山町江和地区はグリーンツーリズムをうたってむらづくりをしています。私は水稲と酪農の複合経営を行い、牛の堆肥を生かした農業に地区全体で取り組んでいます。
高齢化や担い手不足が全国的にも問題になっておりますが、当地区も例外ではありません。そこで農事組合を通してドローン(小型無人機)などを活用したスマート農業による省力化を目指しています。
またIターンで移住してきた就農経験がない人に、農事組合の農機具を貸し出すなどして、不在地主の田で米作りをしてもらうことで耕作放棄地がでないような取り組みにも力を入れています。
近年、大規模な自然災害や獣害が増えてきています。そういった中で農業者を守るための水稲共済制度はわれわれに安心を与えてくれています。
また収入保険制度はさらなる補償拡充がなされ今まで加入できなかった農業者も加入できるようになっています。
今後も多くの人が農業保険に加入し、安心して農業できるようにと思っています。
京都支所
共済部長歴4年
担当戸数21戸
水稲41㌃、乳牛30頭
2022年1月1週号
雇用創出で地域に活気を
「大ぶりに育てて、有名産地との差別化を図りたい」と野村さん
京丹波町で「京の丹波 野村家」の代表を務める野村幸司(のむらこうじ)さん(28)は、ラディッシュ栽培で地域振興を狙い、「雇用を増やし、地域を盛り上げたい」と意気込む。
大学卒業後に食品流通の会社に就職した野村さんは、流通の視点から「現場の生産力を高めることが必要」と感じ、Uターンを決意した。農業をしていた祖父の下で3年学び、2021年4月に代表になった。
ラディッシュ栽培は、廃菌床の堆肥などを施し、“ふかふか”の土にする。「形がきれいで大ぶりなラディッシュが育つ」という。
1棟当たり6回転させ、播種後約1カ月で収穫する。「暑い夏場以外は安定して収穫できるのが強み」と話す野村さん。
「規模を拡大して雇用を増やし、京丹波町をラディッシュの一大産地にしていきたい」と力強く話す。
▽経営規模=ラディッシュ15アール(ハウス7棟)、「黒枝豆」70アール、「伏見とうがらし」10アール
2021年12月2週号
畜産振興へ新しい力 畜産人材育成研修
「大変なこともあるが、楽しい」と大同さん
畜産センターの牛舎で親牛4頭と子牛2頭の管理に当たる
「経営力重視で10年後も続く畜産農家になりたい」と話すのは京丹後市の大同哲也(だいどうてつや)さん(37)。京都府農林水産技術センター畜産センター(綾部市)が2020年度から行う「畜産人材育成研修」の第1期生で、肉牛の繁殖農家を目指し実習中だ。
就農目指し繁殖実習も
料理人として働いていた大同さんは、さまざまな食材を扱う中で地産地消への意識が強くなっていった。「京都肉」というブランドを知ったことで畜産を生業とすることを決心し、同畜産センターが行う研修に応募したという。
研修は2年間で、酪農や肉用牛経営に関する基礎的な知識・技術を、農家でのインターンシップなどを行いながら学ぶ。
1年目は、座学で基礎知識を約半年間学び、実際の農家で視察研修をする。「生の農業経営」を目の当たりにし、将来の経営ビジョンを育むことが目的だ。
2年目は同畜産センター内の畜舎で牛の飼養管理に当たる。、今年9月には肉牛の親牛が導入されたことから、大同さんは繁殖研修を受けている。
「ここでは相談しながら自ら考え、その時にできることをすることを意識している。身に付き方が全く違うし、楽しく学べていると思う」と大同さん。研修の合間に、牛房や放牧地の整備、分娩室の設置に自ら取り組んだ。
「就農後のイメージもはっきりと持てているので、不安がありますが、やっていけると今は感じている」と力強く話す。
同畜産センター主幹の佐々木敬之(ささきひろゆき)さんは「1期生ということで、手探りの中、彼と協力し合ってここまでやってきた。畜産農家を志してくれたことに感謝しているし、今後就農する若い人たちをけん引していく存在になってくれることを期待しています」とエールを送る。
大同さんは研修終了後、地元京丹後市に牛舎を建て、1年後の就農を目指す。「繁殖成績の良い農家となることが第一目標。地域の方々と協力しながら経営を安定させ、WCS(発酵粗飼料)用稲の作付けなど、いろんなことに挑戦できるよう頑張りたい」と笑顔で話す。
2021年11月3週号
直売・加工の拠点で絆生む見守り弁当
左から門田さん、従業員の由利和美さん、正木和子さん、谷初美さん
多い日には60食を配達する「見守り弁当」
福知山市の「里の駅みたけ(従業員27人)」は直売所のほかに、加工品の製造、販売、食堂や弁当配達に取り組む。代表の門田眞(かどたまこと)さん(70)は「地産地消をすすめるため、6次産業化もさらに取り組んでいきたい」と話す。
1999年に三岳(みたけ)高齢者活動促進施設運営委員会が発足。地域の農家の野菜直売所として始まった。門田さんは2012年から代表を務め、直売所に出荷する農家グループを立ち上げるなど、地域と直売所とのつながりを強くしてきた。
「安全で安心な野菜や加工品を提供したい」と話す門田さん自身も直売所に出荷していて(水稲30アール、露地野菜6アール)、出荷農家には、農薬の使用回数を慣行より減らすようお願いしているという。
現在は約60戸の農家が登録し、ホウレンソウやミズナなど、年間で30種類ほどの野菜が店頭に並ぶ。
さらに、直売所を訪れる手段を持たない人の声を聞き、門田さんは同施設で「見守り弁当」を始めた。安全で安心なものをという思いから、米や野菜、肉まで、地元のものを使うようにしている。弁当の主な配達先は、1人暮らしや移動手段を持たない高齢者だ。そういった人と交流する機会になり、地域の見守り活動にもなっている。
施設を利用したイベントや祭りは、新型コロナウイルス感染症の影響で中止になっているが、購入者からは感謝の言葉や手紙をもらうことがあり、従業員のやりがいにつながっているという。
門田さんは「里の駅みたけは地域のよりどころになっている。地域に貢献できるようにこれからも頑張りたい」と意気込む。
2021年10月4週号
九条ねぎ 防除徹底して高品質
加工用九条ねぎの畑で「1株から3回以上収穫します」と野木さん
「高い品質のために防除は毎週します」と話すのは京丹後市の野木利規〈のぎとしのり〉さん(46)。父と妻の3人で、水稲850アール、露地で「九条ねぎ」40アール、ハウス5棟でミズナなどを栽培する。
野木さんの前職は大工。約10年前、地域に耕作放棄地が増え、何とかしたいとの思いから、専業農家になると決意し、実家で就農した。
加工用九条ねぎの露地栽培は、5年前に始め、収入が安定しているため力を入れている。
移植は3月~7月下旬に、2週間ずつずらして行う。収穫は6月~12月中旬で、出荷量は約10トンだ。
収穫は、のこぎり鎌で1株から5本ほど刈り取っていく。同じ株から3回ほど収穫するため、移植の手間が省け、防除に注力することができている。
「自分で考えて生産し頑張った分だけ結果が出る」と野木さん。「栽培した野菜やお米をおいしいと言われる事が一番うれしいので品質の高いものを作っていきたい」と笑顔で話す。
2021年10月3週号
京都市の農家グループが直売活動 新鮮な野菜を多くの人に
開店準備をする福井さん
1日に約200人が訪れる
京都市内の農家らが、「多くの人に、新鮮なものを手にとってほしい」という思いで、2年前から直売活動に取り組んでいる。
「都マルシェ農家と友達」と名付けた直売所は、同市中京区の商業施設の一角を借りている。JR「二条駅」前という立地だ。
活動の主要メンバーは市内の農家5人ほどで、自分たちが生産した農作物をはじめ、市近郊や京丹後市の農家が手掛けた農産物などを並べている。出荷農家は年間で延べ30戸となっている。
活動は徐々に認知され、固定客を獲得し、1日に約200人が訪れる。
直売所の広報活動や接客を行う福井道仁(ふくいみちひと)さん(30歳、京都市)は「お客さんが求めるものをグループ内で共有し、今後の作付けや仕入れに役立てることができている」と話す。「私自身も実家での農作業の経験を生かして、自分で生産した野菜をここで販売していきたい」と意欲的だ。
2021年10月2週号
収入保険で前向きに挑戦
南山城村は宇治茶産地の一つで、私は茶栽培に取り組んで25年になります。小さいころから茶畑に囲まれた生活で、父の仕事姿を見て育ち、就農しました。山間地の昼夜の寒暖の差が、良質の味や香りを引き出します。
就農当時を振り返ると、自然との闘いでした。茶栽培は晩霜被害、水稲や野菜は獣害など収穫直前まで気が抜けませんでした。これまでも農業共済制度で補償を受けましたが、自分に合った保険を選択し、安定した経営と収入確保のため、収入保険に加入しました。
収入保険に加入したことで、市場が求める品種への転換や、品質向上のため棚仕立ての導入など、安心して投資ができます。
また、農業は全国的に担い手不足が深刻となり、荒廃地が増え高齢化が進み深刻な状況です。農業保険の重要性を周知し次世代の担い手が安心してできる農業、魅力ある農業、もうかる農業を目指し、後継者にバトンをつないでいきたいです。
山城支所
共済部長・損害評価員歴5年
担当戸数15戸
茶520アール
2021年9月4週号
幅広い補償が決め手に
左から真下さん、新井さん、廣瀬さん。「圃場に合わせ大型機械を導入し効率化を重視している」と話す
「年3回、全員で農作業安全の研修を実施する」と話す新井さん
福知山市の農事組合法人「鬼の里農園(構成員99人)」は、2019年に収入保険に加入した。代表理事を務めるの新井春男さん(78)は、「農業共済と比べて補償の幅広さが決め手だった」と話す。
2010年に設立し、新井さんら理事3人と監事2人を中心に経営している。「もうかる農業で地域に還元したい」と、約20人のパートを雇う。1筆3㌶の圃場もある大規模圃場で、2年4作(水稲・小麦・小豆・タマネギ)のブロックローテーションを実施する。
「収入保険は収穫後の補償があり、すべての品目をカバーできることが魅力」と総務担当の理事・廣瀬敬治さん(73)は期待を寄せる。
営農担当の理事・真下(ましも)義弘さん(68)は、「昨年から続く新型コロナウイルス感染症でタマネギの出荷がストップしてしまい、在庫を多く抱えている。今年も同じ状況が続いている」と話す。
栽培するタマネギは加工用で、小売り用と比べてサイズが大きいため市場価格が大幅に下がる。さらに、長雨の影響で小麦に湿害が発生し、水稲と小豆の鳥獣害も重なって減収が膨らみ、保険金を受け取った。
「本当に助かった。新型コロナウイルス感染症のような突発的な事象に対しても補償があるのは経営上大きなメリットだ」と話す新井さんは、「預かっている農地は地域の大切な財産。地域に信頼される経営をして、農業で農地を守っていきたい」と前を見据える。
▽経営規模=水稲21・5ヘクタール、小麦10ヘクタール、小豆11・7ヘクタール、タマネギ1・7ヘクタール
2021年9月3週号
竹林整備に手間を惜しまず
切った竹を運ぶ小林さん。「やぶに日光が差し込み明るくなる」と笑顔
「タケノコ栽培は年中、何らかの作業が必要」と話す長岡京市の小林斎司さん(64)はモウソウチク80㌃を管理する。
約20年前に農業団体を退職し、両親が管理していた竹林を継いだ。「当初は自己流だった」と振り返る小林さん。市内のベテラン農家にアドバイスをもらいながら試行錯誤を重ねてきた。
3月下旬から5月中旬にかけてタケノコを堀り、8月に入ると古い竹を切る「竹切り」作業が始まる。根元から切り、枝を落として長さをそろえ搬出する。「樹齢が6、7年の竹200本ほどを1人で切るので1カ月はかかる。大変な作業だが、やぶの新陳代謝を促すことができ、質の高いタケノコが育つ」と話す。
「11月は『敷きわら』と『土入れ』を行う。作業が休みなく続く」と話し、「竹林を守るためにもタケノコ栽培を続けていきたい」と意気込む小林さんだ。
2021年8月4週号
トウモロコシ狩りに手応え
「パールコーンは1株から1本だけ収穫します」と村田さん
久御山町の株式会社村田農園(代表取締役・村田正己(むらたまさみ)さん=46歳)は、「九条ねぎ」「賀茂なす」、ホワイトコーンの栽培に取り組むとともに、トウモロコシ狩りを開催するなど、活発に活動している。
同社は2015年に法人化し、ホワイトコーン栽培は18年に始めた。オリジナルブランド「パールコーン」として出荷する。現在は近隣の農家3戸が栽培に加わり、今年は全体で6㌶、17万本を植えた。
村田さんは「いろいろなことが変化していく中で、柔軟に対応していきたい」と話す。
今年7月に開いたトウモロコシ狩りでは、1日30組の定員が埋まる日もあり手応えを感じた。「農業体験を求める人が増えてきた。先人が残してくれたものを次の世代に伝えつつ、新しいことにもチャレンジしたい」と意欲を燃やす。
▽経営規模=九条ねぎ11.5ヘクタール、パールコーン2・5ヘクタール、賀茂なす20アールほか
2021年8月3週号
対話が楽しい直売所
自身の圃場横に設置した直売所の前で「毎日開いています」と話す才本さん
「直売所の一番の魅力はお客さんとのコミュニケーション」と話すのは、与謝野町の才本勝己さん(73)。自家野菜などの直売所を10年以上運営している。
大阪府で米の卸業に携わっていた才本さんは、45歳の時に地元・与謝野町へ戻り、会社勤めの傍ら農業を始めた。近所直売所を見て、自分もやりたいと思ったのが直売所開設のきっかけだった。
才本さんは旬の野菜や手作りの正月飾りなども販売する。利用客からの「稲わらがほしい」という依頼を受けて、結束が同時にできるバインダーで稲を刈り商品化するなど、要望に応える工夫と手間を惜しまない。
商品を並べるとすぐに来客があり、午前中で売り切れてしまうほど盛況だ。「野菜の調理方法などを聞かれることもあれば、教えてもらうこともある。そうやって常に勉強させてもらっている」と笑顔で話す。
「いつか改装したコンテナ車で直売所をやりたい」と目標を掲げる才本さんだ。
▽経営規模=水稲3・6ヘクタール、野菜ハウス3棟と露地1アール
2021年8月2週号
農地の維持が地域を守る
私の住む地区は市街地から約15キロ離れた中山間地で、水稲の栽培が主です。圃場の近くに山林があり、シカやイノシシによる獣害が絶えません。ワイヤメッシュを設置するなどの対策を講じていますが、完全に防げているわけではありません。
水稲共済はこのような現状に対する補償として大切だと感じています。来年度からは一筆方式が廃止になり、他方式への移行か収入保険への加入が必要となります。それに伴い、未加入者が増えないように推進していきたいと考えています。
私は9年前に専業農家になり、師事した方の農地を引き継ぎました。農業者の高齢化は進んでおり、不耕作地も少しずつ増えているのが現状です。それでも荒地にならないように地域で草刈などの管理を行っていますが、人手不足を実感しています。
後継者不足という課題は避けられませんが、共済部長という立場で得られたものを還元しながら、地域の方々と協力して農業を行なっていきたいです。
中丹支所
共済部長歴7年
担当戸数30戸
水稲679アール、その他野菜19アール
2021年7月4週号
砂丘地メロン 手間惜しまず 農薬控え、こまめに温度調整
1株から1玉だけ収穫する長濵さん
自宅の直売所で販売している「アールスセイヌ」
「お客さまとのつながりを大切にしたい」と話すのは、京丹後市の長濵正実さん(38)。日本海に面して広がる砂丘地がある地域で、両親と妻、パート従業員3人でメロンを栽培し、「地域振興に貢献したい」と話す。
長濵さんは京都府立農業大学校を卒業後、1年半の農業研修を経て、22歳で就農した。「子どもに安心して食べさせられるものを作りたい」と農薬の使用を極力抑えている。
栽培するメロンは2品種。露地約15アールで栽培する「新芳露(しんほうろ)」は追熟が収穫後3日と短いため、市場に出回らない希少な品種だ。糖度が高く、口の中でとろけるような果肉の柔らかさが特徴だ。
ハウス13棟で栽培する「アールスセイヌ」はマスクメロンの一種。3月下旬に定植し、7月中旬から出荷を開始する。砂丘地は水はけがよく、糖度の調整がしやすい利点があるが、「最近は気候の変化が激しく、ハウスの温度管理が難しい」と話す長濵さん。寒冷紗(かんれいしゃ)の使用や換気を施すなど工夫している。
栽培で特に大変なのが、水で濡らした軍手でメロンの表面を拭く「玉拭き」作業。1玉ずつ手作業で力を入れて拭く必要がある。重労働だが、このひと手間を加えることで、網目が太く鮮明に盛り上がり、見た目の美しいメロンになる。
収穫後は、JA京都や市場への出荷、家の前に設置している直売所で販売する。直売所では、接客できるよう母と交代で店番をし、客とのコミュニケーションを大切にしている。「海水浴帰りに立ち寄る人たちがリピーターとなり、毎年来てくれる。そこから口コミが広がり、注文を受けることもある」と手応えをつかむ。
「京丹後市産メロンの知名度がもっと上がってくれたらうれしい」と話し、「子どもは味の感想を正直に言ってくれるので、おいしいと言ってもらえるように作っていきたい」と笑顔を見せる長濵さんだ。
▽経営規模=水稲約360アール、メロンやトマト、小カブ、ユリなどハウス20棟(約56アール)
2021年7月3週号
耐病性品種で農薬減
農薬の使用を極力減らすため、「除草剤も使いません」と浦辻さん
木津川市の浦辻克暢(かつのぶ)さん(46)はキュウリを夏と秋の2作で栽培する。収穫量は年間約10トンで、市場出荷に加え、飲食店や個人宅向けに販売し、自身で配達する。
農薬の使用を極力減らして栽培するため、顧客からは「子どもに丸かじりで食べさせられる」と好評だ。
今年は「艶香(えんか)」を導入した。褐斑(かっぱん)病やうどんこ病、べと病に加え、ウイルス病にも耐性があることが決め手だったという。「耐病性のある品種を選ぶことにより、農薬の使用を抑えられる」と話す。
日光を十分に取り入れるため株間は1㍍とし、親づる1本と子づる2本で仕立てる。肥料には、米ぬかや骨粉が配合された有機肥料を使用する。
「祖父から受け継いだ農業を継続していきたい」と前を見据える浦辻さんだ。
▽経営規模=水稲200アール、キュウリ8アール、その他露地野菜92アール
2021年7月2週号
良質野菜で地域を元気に
チンゲンサイを収穫する森田さん。「日々の農作業が楽しい」と笑顔で話す
「おいしい野菜を作り、地域を元気にしたい」と話すのは、亀岡市の森田信行さん(41)。ハウス10棟(約30アール)と露地栽培(50アール)でトマトなどの果菜類、チンゲンサイなど栽培する。
約8年前に就農した森田さんは、「当初は思ったような品質の野菜が作れず苦労した」と振り返る。
品質向上のために土づくりを地域の先輩から学び、4年前にエコファーマーの認定を受けた。栄養を吸収しやすくするため、土に微生物を入れるなど試行錯誤を重ね、「今では納得できる品質の野菜を作ることができている」と自信を見せる。
「市全体を盛り上げていきたい」と、今年1月に市内の同世代の農業者など6人で「KYU(カワヒガシ若手組合)」を結成した。ワークショップなどを企画するなど精力的に活動する。
「おいしいものを作り、お客さんに評価してもらえたらうれしい。それが地域活性化にもつながれば」と展望する。
2021年6月3週号
京都の酒造り 米作りで支えたい
清水さんは水稲を9ヘクタール栽培している
農業の傍ら杜氏(とうじ)として長年務めてきた京丹後市の清水源次郎さん(69)は、「京都の酒造りを支えたい」と、府などが共同で育成した酒造用原料米品種「京の輝き」を2ヘクタールで栽培している。
17歳から昨年まで、半世紀にわたって酒造りに杜氏として携わってきた。
全盛期だった昭和40年代には、地元の農業者が中心の丹後杜氏組合員530人が、毎年10月から翌年4月まで酒造りが盛んな京都伏見などに赴き、蔵元ごとに15~20人に分かれて酒造りを行った。
「杜氏はかつて日本酒ブームを支えていたが、今や機械化が進み、昨年は4人だけの参加だった。今シーズンはコロナ禍で誰も行きませんでした」と残念そうに話す清水さん。新型コロナウイルスが収束し、依頼があれば参加したいという。
京都の酒造りは、醪(もろみ)に「祝」、掛米(かけまい)には「京の輝き」というように、府内で育成・生産された品種・原料で仕込まれてきたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で供給も需要も落ち込んでいる。
「厳しい状況にあるが、京都の酒造りを守りたい」と原料の米作りで応援する清水さんだ。
2021年6月2週号
収穫の喜び、達成感を満喫
ウスイエンドウを収穫する木田さん
「農業の魅力を伝えられる存在になりたい」と話すのは井手町の木田和男さん(63)。料理人だった木田さんは、5年前に父の後を継いで就農し、水稲70㌃、タケノコ40㌃、ウスイエンドウなど野菜65㌃を栽培している。
JA京都やましろのナスなどの生産部会に所属し、積極的に情報交換して栽培技術の向上に努める。「食の安全・安心を届けたい」という思いから、自身で有機肥料を作り、ウスイエンドウの栽培にはおからと油粕を混合した肥料を使用する。
「農業は天候に左右されやすく、出荷のタイミングによっても収入が変わる。難しいことも多いが、収穫時の達成感は何よりも感慨深い」と話す木田さん。
自身で栽培した野菜を近所の人に食べてもらうため、豆ごはんや豆大福を作り近所に配る。
「この地域でも後継者不足が深刻。若者の手本になれるように、栽培技術を上げて、収入も伸ばしていきたい」と抱負を話す。
2021年5月4週号
小さな被害は特約でカバー
キュウリの誘引作業。ハウス内は防草のためもみ殻を敷く
ハウスがあった場所で被害の様子を説明する和久田さん
「園芸施設共済は自分を守るためのもので安心感がある」と話すのは宮津市の和久田智司さん(63)。約40種の野菜を栽培し、同市内の老舗旅館やホテルに出荷するほか、直売所でも販売する。
園芸施設共済に加入して約40年になり、昨年9月に新設された「小損害不てん補1万円特約」を付けた。この特約でビニールが破れるといった軽微な被害に対しても備える考えだ。
昨年12月の降雪により、11棟あったハウスのうち全損3棟、半損2棟に及ぶ被害を受けた。和久田さんは「就農して40年になるが、今までで一番大きな被害になった」と振り返る。
「ハウスの補強や竹の支柱を細かい幅で立てるなどの降雪対策はしていた。水分を多く含んだ重い雪だったことが、被害が大きくなった原因だと思う」と分析し、「撤去等の労力が大変だった。共済金を早くに受け取ることができたので助かった」と話す。
宮津市産業経済部農林水産課の千阪季成課長補佐は「災害の時こそ保険の力が活きる。和久田さんは京都府指導農業士で地域のリーダーとして若手農業者の育成に活躍していただいている。早期再建をしてもらいたい」と見守る。
再建した4棟は32㍉の太いパイプに加え、タイバーを取り付けて補強するなど対策を強化した。「台風や突風もいつくるか分からない。対策を万全にし、共済で備えていく」と力強く話す和久田さんだ。
▽経営規模=ハウス10棟30アールと露地20アール(キュウリ・トマト・ナス・ホウレンソウなど)、水稲260アール
2021年5月2週号
花をもっと身近に 小学生に花育
「いろいろな売り方を考えてお客さんの反応を身近に感じたい」と話すのは宇治市で代々花を生産する今村正喜(まさき)さん(38)。花を身近な存在にしようと販売方法に工夫を凝らしながら、小学生を対象に花育にも取り組む。
ヒマワリを手に「花育を通じて花と触れ合ってほしい」と今村さん
束ねる作業はゴザを敷き花を汚さないよう気を付ける
今村さんは、安政時代(1855~60年)の初代・丹波屋喜兵衛さんから数えて13代目。12代目の父・信吾さん(69)とともにハウス10棟(30㌃)で小ギクやグラジオラス、ヒマワリなどを生産している。
切り花の市場出荷がメインだが、定期的に行われている地域のイベントでの対面販売を意欲的に行う。「市場出荷ではわからなかった消費者の反応が見えてくるようになり、消費者が求めていることがわかった」と話す今村さん。家庭用切り花に需要があると分析し、力を入れているという。できる限り長く、きれいに咲くように出荷のタイミングを調整するなど工夫する。
生命や個性を教える
2017年から取り組んでいるのが、花を教材に生命や個性について学ぶ「花育」と呼ばれる活動だ。宇治市内の小中学校では、地域の素材や体験、活動から学ぶ「宇治学」という授業が実施されていて、今村さんは小学校で宇治学の講師として授業を受け持つ。
花育では、ユーカリやグラジオラス、ヒマワリなどを使用する。「それぞれの花の違いを知ってもらいたい」と、植え方や育て方を教えている。種子を生徒に渡し、家に持ち帰って育ててもらう。「自分で育てた花を見て触れることにより、花の知識を増やしてもらいたい。花を育てた経験を大人になったときに思い出してくれるとうれしい」と笑顔を見せる。
「花の認知度を上げていくことにより、華道文化が発展していってほしい」と話す今村さん。今後は、「家庭向けの販売に力を入れていきながら、イベントや行事での装飾用にも花を使ってもらえるよう、計画を立てている」と意気込む。
2021年4月4週号
万願寺甘とうに挑戦 地域に恩返しを
万願寺甘とうの苗を手に奥野さん
「特産の『万願寺甘とう』や『舞鶴茶』をさらに広めていける人材になりたい」と話す舞鶴市の奥野亜里沙さん(33)は、2022年の就農に向けて歩みを進めている。
奥野さんは大学卒業後、海上自衛隊での勤務を経て、昨年6月に京都府の支援制度に申し込み、同市内の担い手養成実践農場で研修中だ。
実家は舞鶴茶を生産する奥野さん。地域の温かさに触れたことをきっかけに農業の道を志したという。「家に帰ると玄関にそっと野菜が置かれていたりすると、本当にうれしくて。恩返しをしたいと思った」と笑顔で話す。
実践農場のほかに借りた農地18アールでは万願寺甘とうを栽培し、講師の添田潤(そえだじゅん)さん(43)から指導を受ける。「慣れない作業に戸惑うことも多い」というが、添田さんは「経営ビジョンにもセンスがあるので将来が楽しみ」と期待を寄せる。
「今は教わった内容を着実にこなしていくことに集中して就農準備を進めたい」と意気込み、来年の農家デビューを目指す。
2021年4月2週号
ホンシメジ 地元の木材で順調に菌床栽培
大黒本しめじを手に「大黒さまのようなふくよかな形や濃厚なうま味、肉厚な食感が魅力」と新谷さん
「大黒本しめじ」の商品名で販売する
京丹波町の瑞穂農林株式会社(代表=新谷一成(あらやかずなり)さん・44歳)は、ホンシメジ「京丹波大黒本(きょうたんばだいこくほん)しめじ」を菌床栽培で生産する。生産量は年間約300㌧だ。
新谷さんは「栽培初期は特に雑菌に弱いので、管理を厳重に行っている」と話し、栽培の難しさを日々感じているという。
培地の原料となるおが粉は京都府内産の木材を使用し、自社で加工する。廃菌床は地元の養豚場で床材として利用される。「京都府内で資源の循環利用ができるよう工夫している。地域活性化の一助になれば」と話す。
京丹波大黒本しめじは、2015年に公益社団法人京のふるさと産品協会が認証する「京のブランド産品」に認定された。「京丹波大黒本しめじを通じて京都の魅力を発信することで、新たな顧客を増やし、増産につなげたい」と意気込む。